●日本の自然・原風景を描く
郷土が生んだ日本画家 石川 義 展
第7・第8・第9展示室
昭和5年、金沢に生まれた石川氏は、金沢美術工芸短期大学で日本画を学んだ後、京都に出て日展を中心に活躍し、確実に自己の画風を築き上げてきました。現在は、日展評議員として、画壇の重責を担われています。
本展は、近年石川氏より、多数ご寄附いただいた作品を中心に、代表作を加えて、64点を一堂に展示し、その画業を振り返るとともに、石川芸術の真髄に触れていただこうとするものです。
第1部 深遠なる自然美の世界
石川氏は、昭和27年、日展に初入選を果たして以来、今日まで約50年間、数多くの作品を発表してきました。
その中心的なモティーフとなっているのは、豊かなわが国の自然であり、さまざまな風景の初層をとらえ、表現しています。とりわけ山や森、海や池、滝など雄大な光景を、深い観照の眼差しと巧みな技術によって、力強く、また幻想的に描写し、存在感ある画面を生み出しています。
第1部では、初期から最近の制作に至る、日展出品作を中心に展示し、画業の足跡をたどるとともに、その深遠な自然美の世界をご覧いただきます。
第2部 杉の輪廻
これまでわが国の自然美を追究してこられた石川氏のモティーフの中で、とくに愛着を抱いてきたのが「杉」でした。
「山肌の土から顔出した小さな“杉”の芽が次第に成長し、子に、青年に、大人に、やがて老樹となり、枯れ始め、元の土に戻り、再び新しい芽が生まれる」と語る氏は、自然のふしぎな輪廻の有様を絵筆に託してきたのです。
第2部では、平成6年に「杉の輪廻 石川義展」と題して開催された個展に出品された作品を中心に展示し、氏の「杉」に寄せる熱い思いを感じ取っていただきたいと思います。
第3部 生きものたちの饗宴
石川氏の描く作品の中には、大自然の中に生息する、さまざまな生きものの姿を見出すことができます。それらは鳥や魚、動物、あるいは蛙などであり、自然と一体となって生きる姿が、氏の温かい眼差しによってとらえられています。それぞれが、この地上において、個性をもったかけがえのない存在であり、自然との共生のあるべき姿を、映し出しているようでもあるのです。
第3部では、氏が中心となって結成した日本画の研究グループ「玄」展に出品された作品を中心に展示し、氏の画業のもう一つの側面をご紹介いたします。
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