秋の優品選(工芸)
第5展示室
  平成27年9月12日(土)〜10月25日(日)  会期中無休     


 近年、高精細スキャナ・3Dプリンタなどを用いて、美術品や工芸品を精巧に模し、文化財保護に活用する技術がしばしば話題に上がります。その完成度は一瞬、本物と見まがうほど。一方、時間をかけ、人の手によってこつこつと培われてきたわざの持つ力が、これまで以上に実感されるときでもあります。
 たとえば、今回展示する山田宗美《鉄打出鳩置物》に注目してみましょう。瓦の上にふわりととまる鳩の姿は、柔らかそうにふくらみ、じっと見ていると、あたかも動き出しそうに思われます。しかし実は、瓦も鳩もひと続きの、うすい鉄板から造られているのです。熱を加えながら、槌などの道具を用い、文字通りこつこつと打ち出すことで立体作品に仕上げられました。そのため鉄製にも関わらず、重量はきわめて軽いという特徴をもちます。数百点ともいわれる試作の末、この「鉄打出」技法を極めた山田宗美。明治4年、代々刀剣や甲冑などをつくる家に生まれました。父、宗光に師事し、卓越した技法により国内外で高い評価を受けます。ついに帝室技芸員にも内定しましたが、40代にして亡くなり、かないませんでした。のちに高橋介州が「古今東西を通じて最も技術的に困難」と評価したわざは、全体に施された槌あとに刻まれています。宗美作《鉄打出布袋置物》とあわせてお楽しみ下さい。
 さらに平成26年度新収蔵品、隅谷正峯《太刀 庚戌年八月 加賀国住両山子正峯作之》や新村 吉《漆皮花蝶文盤》もご紹介。秋の訪れを感じさせる作品と、お待ちしております。

 

No. 分野 作家名 作品名 制作年 展覧会 ・受賞
1 陶磁 九代大樋長左衛門 黒茶わん 1982 第29回日本伝統工芸展
2 陶磁 十代大樋長左衛門 飴釉壺「兎の夢」 2010 第42回改組日展
3 陶磁 金重陶陽 備前花器 1950  
4 陶磁 北出不二雄 青手鳥文台鉢 1983 第7回伝統九谷焼工芸展
5 陶磁 武腰 潤 色絵春秋草花文台皿 1987 第10回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
6 陶磁 竹田有恒 釉裏金彩穂波文鉢 1972 第19回日本伝統工芸展
7 陶磁 田村敬星 金銀彩文陶筥 1982 第5回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
8 陶磁 初代徳田八十吉 色絵山水図大鉢 1953  
9 陶磁 三代徳田八十吉 耀三彩壷 2007  
10 陶磁 富本憲吉 竹林月夜図皿 1930  
11 陶磁 中田一於 釉裏銀彩切箔鉢 1982 第29回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞
12 陶磁 中村研一 立田川図皿 1955  
13 陶磁 長谷川塑人 鉄絵銅彩草花文大鉢 1996 第52回現代美術展 北國新聞社賞
14 陶磁 福島武山 赤絵壺「かざはな」 2001 第24回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
15 陶磁 松村昌子 青釉花瓶「実り」 1997 第20回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
16 陶磁 南 繁正 牡丹図鉢 2003 第26回伝統九谷焼工芸展 大賞
17 陶磁 山田義明 野葡萄文面取壷 2011 第34回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
18 陶磁 吉田荘八 色絵星晨春秋方器 1988 第11回伝統九谷焼工芸展 大賞
19 陶磁 吉田美統 釉裏金彩秋草譜飾鉢 1982 第5回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
20 陶磁 吉田幸央 色絵金銀彩平鉢 1996 第19回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
21 陶磁 米山 央 金銀彩陶筥 2007 第30回伝統九谷焼工芸展 大賞
22 漆芸 池田喜一 枯尾花文色紙箱 1979 第4回石川県工芸作家選抜美術展
23 漆芸 大場松魚 平文輪彩箱 1984 第31回日本伝統工芸展
24 漆芸 小松芳光 ひさご漆飾筥 1981 第13回改組日展
25 漆芸 小森邦衞 曲輪造籃胎盤 1992 第3回石川県作家選抜美術展
26 漆芸 佐治賢使 柘榴盆 1944  
27 漆芸 新村撰吉 漆皮花蝶文盤 1970 第17回日本伝統工芸展
28 漆芸 寺井直次 蒔絵筥 極光 1991 第48回現代美術展
29 漆芸 二木成抱 蒔絵秋草図飾棚    
30 漆芸 松田権六 菱文蒔絵平卓 1964 第11回日本伝統工芸展
31 漆芸 三谷吾一 鳥香合 1979 第4回石川県工芸作家選抜美術展
32 漆芸 山岸一男 沈黒緑陰箱「能登有情」 2005 第52回日本伝統工芸展 高松宮記念賞
33 染織 木村雨山 春秋の譜 秋 c.1935  
34 染織 小宮康孝 江戸小紋菊通し着物 1983 第30回日本伝統工芸展
35 染織 羽田登喜男 友禅薄茶地金銀摺箔花びら散文振袖「響秋」 1963 第68回秋の美展 特選第一席
36 染織 森口華弘 友禅訪問着「白菊」 1985 第2回全日本伝統工芸選抜作家展
37 金工 山田宗美 鉄打出鳩置物 1909  
38 金工 山田宗美 鉄打出布袋置物 19〜20c  
39 金工 米沢弘安 氈鹿文鉄打出菓子器(付 玉井敬泉下絵) 1928 第9回帝展
40 刀剣 隅谷正峯 太刀 庚戌年八月 加賀国住両山子正峯作之 1970  
41 刀剣 隅谷正峯 脇指 銘傘笠正峯作之 平成七年二月日 1995  
42 木竹工 二代伊藤伊斎 亀甲透飾筥 1946 第2回日展入選
43 木竹工 氷見晃堂 桑造高卓 1964  
44 人形 井口十糸 木芯桐塑人形「森の秋」 1983 第30回日本伝統工芸展

45

截金 西出大三 香亀 1972 第19回日本伝統工芸展

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