毎年この時期に開催する恒例の尊經閣文庫名品展です。今回は、国宝『類聚国史』を26年ぶりに公開します。
『類聚国史』とは、六国史(『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』)の記事を、その内容に従って編年とともに分類編集した歴史書です。これは前田家が遠祖として尊崇する菅原道真の編纂により、寛平4(892)年に成立したものです。もとは本文200巻・目録2巻・系図3巻の計205巻でしたが、現存するのは62巻のみとなっています。その内容は、神 、帝王、後宮、人、歳時、音楽、賞宴、奉献、政理、刑法、職官、文、田地、祥瑞、災異、仏道、風俗、殊俗という18の分類(類聚)ごとにまとめられています。
前田家に伝わる4巻(巻第165「祥瑞部上」・171「災異部五」・177「仏道部四」・179「仏道部六」)は現存最古の平安時代末期の古写本です。前田家の入手時期は、学者大名といわれた加賀藩5代藩主前田綱紀によるものです。また、綱紀はこの入手以前に、すでにその模写本を作らせています。そのほか室町時代の写本も2種類入手していますが、こうした『類聚国史』収集への熱意は、綱紀が菅原道真を篤く尊崇した特別な想いによるものです。なお、綱紀は道真や菅原氏に関する書籍や資料の収集にも力を注いでおり、道真の自撰漢詩文集『菅家文草』や『菅家系図』なども合わせて展示します。
このような綱紀の業績は、今日の文化財保存事業の先がけといえるものです。(前後期で作品の巻替えを行います)