「夏の優品選Ⅱ」は、絵画・彫刻分野の季節感ある作品や、当館を代表する作品を紹介する展示のパートⅡです。各部門を代表する作品を紹介します。
　日本画からは、昨年度寄託された東山魁夷の《瀧》を紹介します。制作は1954年、魁夷46歳の作です。いまでは誰もが知る画家前期の代表作《道》を発表し４年、風景画家としてのあゆみを固めはじめたころの作品です。作画自体はかざらず、つくろわず。一本の瀧を堂々と描ききっています。東山魁夷の自然に対峙する姿勢がしのばれます。
　油画の《丘》は風景画家、村田省蔵の北海道シリーズを代表する一作です。画面右にそびえるポプラは、昭和40年代に自動車CMに登場し、そのキャッチコピーから「ケンとメリーの樹」と呼ばれるようになったとか。前景は黄土と緑の鮮やかなコントラスト。中間のポプラを境に、遠景のラベンダーや畑の緑が豊かな色層をなし、わき上がる夏雲と相まって北海道の夏を満喫させてくれるようです。
　最後は彫刻部門から現代具象彫刻を代表する作家、中村晋也の《Miserere Ⅵ》です。阪神淡路大震災の映像を眼にした作者の「自分になにができるのか。」との自問から生まれたシリーズの第六作です。そのような制作背景をもつ本作の前に立つと、あのグレゴリオ・アレグリの合唱曲「ミゼレーレ（我を憐れみたまえ）」の敬虔なしらべがきこえてくるようです。静かな時間がながれます。