近代以降、日本画は時間をかけて大きな変化をみせてきました。その変化とは、テーマはもちろん画材の扱いや構図に至るまでであり、近世以前と変っていないところを探す方が難しいくらいです。今回の特集展示は、そのうち「構図の変化と工夫」に着目し、館蔵の日本画から紹介しようとする試みです。
明治までの数世紀、大きな変化を見せなかった日本絵画の構図は、近代以降の150年で大きく変化しました。それは鎖国された近世までの時代と、西洋文明を積極的に取り入れ、変貌を遂げた近代以降の文明の違いに呼応しています。では構図がどのように、何故変化したのか、いくつか例を挙げて考えてみます。
まず、大和絵などに多く見られた説明的な俯瞰(見下ろした)構図は影を潜めました。これは、絵画の記録媒体として担っていた側面が薄れてきたことや、全体を把握する作画法から部分に焦点をあてる作画法にシフトしてきた事が考えられます。
そして従来の日本絵画に多用されてきた「空間」や「間」が消失しました。様々な理由が考えられますが、西洋画の移入により、見える物は全て描き入れるようになったこと、西洋画的な構図の取り方を教育されてきたことが挙げられます。さらに床の間のある家屋が減り、軸装画の需要が減少したことは、広大な空間を生みやすい縦長な構図の作品が描かれなくなった理由といえます。
本特集では、見過ごされがちな「構図」に着目し、楽しんでいただきたく思います。