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学芸員コラムColumn

2020年3月1日展覧会#56 2020年度の名物刀剣等展示予定

国宝《剣 銘吉光》白山比咩神社蔵

 新型コロナウィルスの感染拡大防止に国を挙げて取り組んでいるところですが、石川県立美術館の2020年度展覧会スケジュールが本日公開されました。

展覧会スケジュール2020

 そこで、昨年6月の学芸員コラム#50の最後にお伝えしましたように、2020年度の名物刀剣等の展示予定をお知らせします。(公財)前田育徳会ご所蔵の国宝《刀 無銘正宗(名物 太郎作正宗)》と重要文化財《短刀 銘吉光(名物 前田藤四郎)》は、本年725()830()の会期で開催される夏季企画展「加賀百万石 文武の誉れ-歴史と継承-」で展示されます。さらに本展には、白山比咩神社ご所蔵の国宝《剣 銘吉光》、重文《太刀 銘備前国長船住長光》も展示されます。このほかに、前田家ゆかりの名物刀剣2口が現在出品交渉中で、出品が確定しましたらお知らせします。
 三代将軍・徳川家光の養女・阿智子(清泰院、水戸徳川頼房の子)が、加賀藩四代藩主・前田光高に輿入れした際の持参品だった国宝《剣 銘吉光》と、引出物として家光から光高に下賜された「名物 太郎作正宗」が、石川県立美術館で同時に展示されるのは今回が初めてであり、将軍家と前田家の緊張関係を、加賀藩主・前田家による文化政策の原動力であったと位置付ける本展の趣旨が、絶妙に敷衍されるものと思います。
 そこで「加賀百万石 文武の誉れ-歴史と継承-」について、もう少しお伝えします。
 本展は、尊經閣文庫に伝わる国宝・重要文化財をはじめ、今日に至る「百万石ブランド」による文化的求心力によって石川県に集積された茶道美術の名品などを通して、石川の文化風土から、文と武に際立った前田家の戦略的な文化政策を再認識します。同時に、海外からも注目されている高山右近ゆかりの地として、キリシタンの記憶を今日に伝える文化財もあわせて展示し、オリンピック、パラリンピック開催を機に、本県の文化的アイデンティティーを歴史と継承の観点から広く内外に発信するものです。
 従来の「加賀百万石展」と異なるのは、展示構成を狭義の‘前田家ゆかり’に限定せずに、藩祖・前田利家の文化観に影響を与えたと考えられる、豊臣秀吉や千利休ゆかりの作品も展示する点です。重要美術品《刀絵図》(本阿弥光徳奥書)や石川県指定文化財《黒楽茶碗 銘北野》(長次郎作)は、こうした観点から展示します。同時にこの2点は、「百万石ブランド」によって当地にもたらされており、「歴史と継承」との副題を具現化するものといえます。さらに名物刀剣と同時に展示されることで、国宝《土佐日記》の収集や、《黒楽茶碗 銘北野》にこめた、藩主や利休の深い情念が顕在化するのではないかと思います。こうした点も本展の見所として、是非ご期待いただきたいと思います。
 また、2020年度は、コレクション部門の特別陳列として523日~614日に「加賀文化の粋Ⅲ 加州刀」を開催します。藤嶋系の藤嶋友重、家次、清光を中心とした構成となる予定です。こちらもどうぞご期待ください。(担当課長 村瀬博春)

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