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学芸員コラムColumn

2019年10月1日その他【美術館小史・余話22】美術を学ぶ婦人学級(二)

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

 

旧石川県美術館 (現石川県立伝統産業工芸館)

 婦人学級生を募集するにしても、まずその先に講座内容と講師を決定しなければならない。
 先号で述べたように、石川県らしい講座内容とは何か、ということを検討した結果、やはり伝統工芸を中心にすべきだということになった。そして重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝を総動員し、それに準ずる作家の方々にもお願いして、石川県の美術工芸のすべての分野にわたって講座内容を組むこととした。
 しかしいざ組んでみると、24回予定のうち半分はどうにか埋まり、講師陣もそうそうたる顔が揃ったが、残りの半分は全く見当がつかない。そこで、開催する企画展の列品解説、鑑賞会を挟んではみたが、それでも5、6回が空いてしまう。
 結局お前が美術史の連続講座を担当しろということで、私にお鉢がまわってきた。
 その頃の私は美術館に勤務はしていたものの、やっと10年そこそこの、まだ若造であり、ほかの講師陣の顔触れからしても、バランスが全くとれないということで、再三辞退したのであるが、高橋勇館長(当時)の命令ということで、担当せざるを得なくなった。
 これは私にとっては大変なことであったが、人間国宝全員にご出講いただく交渉は、またこれ以上に大変な仕事であった。
 それでも一応どうにか全員のご了解を得ることに成功した。
 人間国宝の方々から、いろいろとお話しを聞くことが出来る講座ということで、募集を行ったら希望者が殺到し、参加者は抽選で選ぶことになった。心配した私の美術史講座も、猛勉強の成果が出たのか、割合好評であった。
 何はともあれ戦後における美術館の講座としては、全国で2番目であり、それは教育活動の走りでもあった。

  (嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第223号、平成14年5月1日発行)

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