Loading
画面を読み込んでいます

学芸員コラムColumn

2019年8月25日その他【美術館小史・余話17】教育普及活動の開始(1)

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

 昭和40年代に入り、美術館の活動もようやく軌道に乗ってきた。美術品の収集家や先輩の国公私立美術館からも信頼を得て、企画展開催のための美術品も借用できるようになってきた。
 こうした状況の中にあって話題にのぼってきたのが「展示活動ばかりではなく、美術館へやってきた人々に対し、展示作品の解説等を行う、いわゆる教育活動を実施すべきではないか」ということである。
 しかしその当時学芸の仕事を担当していたのは、私を含めて3名。その3名で企画、交渉、借用、展示、図録の編集、広報のすべてをこなし、その上解説活動までを実施するということになると、正直いって大変であった。
 そこで考え出されたのが、当時初めて試験的に実施され始められていた「マグシーバー・ガイド方式」の導入であった。今でいうオーディオガイドの走りである。
 今日のオーディオガイドは、そのほとんどが、録音された解説を収めた器具を入館者が持ち歩いて、展示作品に表示されている番号等を選択して聴く方式をとっている。
 これに対しマグシーバー・ガイド方式とは、まず展示作品を見る順序に従って解説を録音し、その解説を展示室の周囲に張り巡らした有線を通して磁波として発信する。その有線の囲みの中に入れば、入館者はイヤホーンを通して磁波を受信し解説が聴ける、という仕組みである。
 ところが2つの展示室が接近している所は、それぞれの展示室の解説が入り乱れる、いわば混信状態に陥り、これには多くの方からお小言を頂戴してしまった。しかし何はともあれ、視聴覚機器使用による最初の教育活動を始めることができた。

  (嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第218号、平成13年12月1日発行)

ページの最上部へ