Loading
画面を読み込んでいます

学芸員コラムColumn

2019年4月9日その他【美術館小史・余話13】山川コレクション茶道美術品収蔵をめぐって

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

野々村仁清《色絵雉香炉》国宝

野々村仁清《色絵雉香炉》国宝

 旧石川県美術館が昭和34年に開館してから、一番の悩みの種は何といっても収蔵品の不足であった。このシリーズの(7)「展示室の運用」(第208号)で述べたように、県から引き継いだ作品で展示可能なものは200点あるかないかという状況であったため、コレクターや作家から作品を借用して、常に展覧会を開催していかなければならなかった。
 しかしこうした運営にも何か限界があり、また財政的にも厳しい時代であったので、作品を借用するより、寄託を進めるべきだという意見が、運営委員より出された。
 とはいえ自分の家の財産ともいうべき美術品を、長期間美術館へ寄託するというようなことは初めてでもあり、言うは易しで実現はなかなか困難であった。
 こうした時に、現在の当館の目玉となっている、国宝の雉香炉を寄附された故山川庄太郎さんが収集された茶道美術の一括コレクションが寄託されることになった。昭和37年のことである。
 山川庄太郎さんは、亡くなられる直前に、コレクションが散逸することを恐れ、財団法人を組織して管理を委託し、それを美術館へ寄託することを望まれていた。そのことを財団役員の方々が実現されたわけである。
 山川さんはその実現を見ないまま、昭和36年12月22日に他界された。その後このコレクションは、現在の美術館開館にともない一括寄附されて、当館コレクションを形成する一つの柱となっている。
 改めて山川庄太郎さんと旧財団関係者に深く感謝の意を表したいと思う。
  (嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第214号、平成13年8月1日発行)

ページの最上部へ