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学芸員コラムColumn

2019年3月19日その他【美術館小史・余話12】日本伝統工芸展金沢展開催の経緯

金沢で初めて開催された日本伝統工芸展のポスター

金沢で初めて開催された日本伝統工芸展のポスター(第10回・昭和38年)

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

 昭和34年の秋に開館した旧石川県美術館は、県庁より引き継いだ旧商品陳列所の美術品を常設展示とし、それに石川の伝統工芸のなかでも主として江戸時代の古美術品を中心に、企画テーマを設定しながら運営を行ってきた。
 先月号ですでに述べたように、その最も大規模な企画展が、加賀百万石名宝展であった。
 ところが開館以来くすぶっていた展示室の外部団体への提供、いわゆる貸展示室の問題が急浮上してきた。すでに旧館の開館2年目の昭和35年に金沢市内で第2回の日展が開催された時、第4科の工芸部門を当館で対応したことも手伝って、そのことが話題となった。
 美術館は、本来貸展示室を行う機関ではなく、美術館のスタッフが企画運営を行うべきで、日展の場合は例外中の例外であるとし、大いに議論がたたかわされた。
 そこへ日本伝統工芸展の巡回展を引き受けてくれないかという話が、松田権六さんから舞い込んできた。
 日本伝統工芸展は、い わゆる人間国宝を中心に文化庁や県教育委員会が関係する展覧会であり、工芸を運営の柱に据えている美術館にとっては受けるべきであるという意見と、これを受けたら各種団体の申し込みを断ることができなくなるという意見とで侃侃諤諤(かんかんがくがく)であったが、結局受けることになった。
 それ以来今日まで、 日本伝統工芸展は当館の秋を飾る代表的な展観となって続いている。
(嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第213号、平成13年7月1日発行)

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