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学芸員コラムColumn

2018年6月29日所蔵品#36 小絲源太郎《猫のいる静物》

小絲源太郎《猫のいる静物》

 小絲源太郎(1887~1978)は東京美術学校(現東京藝術大学)金工科を卒業後、あらためて西洋画科に入り油絵を学びました。画業の初めに緻密な金工に通ずる、細密描写の写実的静物画で高い評価を得ますが、昭和9年(1934)頃から大らかな筆遣いによる新たな表現を試み始めました。
 本作は昭和11年の第23回光風会展出品作で、中期の代表作の一つです。
 どっしりとしたテーブルを、ほぼ正方形の画面横いっぱいに描き、卓上には静物を、卓の下には眠る猫を配しています。画面の中心にはガラスのコップと果物鉢、それをとりまいて時計や本、帽子、模型の帆船が配置されて空間を生み、またそれらを幾分左に傾けて動感を感じさせています。そして、同色で模様もよく似た本と猫を一対として、バランスをとっているのです。
 ご家族によれば、小絲自身大変気に入り、終生アトリエにかけていたとのこと。大らかで勢いのあるタッチがリズムを生み、くつろいだ猫が和らぎを醸し出す静物画です。(普及課長 二木伸一郎)

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