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学芸員コラムColumn

2017年6月1日展覧会#26 「百万石まつり」を10倍楽しむ

重要文化財《金小札白糸素懸威胴丸具足》前田育徳会蔵

 今年も、加賀藩祖・前田利家が天正11年(1583)年6月14日、金沢城に入城し、金沢の礎を築いた偉業をしのんで開催される「百万石まつり」の季節がやってきました。近年は、黄金の甲冑を身にまとう姿が、利家金沢城入城のイメージとしてすっかり定着しているようです。そこで、この「百万石まつり」で全国からお越しになる皆様に是非ご覧いただきたいのが、黄金の甲冑のオリジナルで、現在展示中の重要文化財《金小札白糸素懸威胴丸具足》です。 
 これは全体に漆を塗って金箔を押した桃山時代の黄金趣味を良く伝える具足で、胸板・脇板の形状などに初期の当世具足の特徴が良く表れています。兜は熨斗烏帽子形の変わり兜で、錣(しころ)の上には白いヤクの毛でできた引廻しが付いており、着用者を荘厳する意図が感じられます。同時に展示している具足櫃の由緒書には、1584年9月に越後の佐々成政が能州羽咋郡の末森城を攻めた「末森の合戦」で、落城寸前にまで追い込まれながらも前田利家が救援に駆けつけ、佐々軍を撃破するまで城を死守した奥村永福に、利家がその日着用していたこの具足を恩賞として与え、後年奥村家から、加賀藩五代藩主・前田綱紀に献上された旨が記されています。
 さて、末森の合戦は金沢城入城の翌年ですから、あるいは「かぶき者」利家は入城の際もこの出で立ちだったかも知れません。(学芸第一課担当課長 村瀬博春)

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