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学芸員コラムColumn

2016年12月15日展覧会#020 開小品の魅力-恥じらう乙女達

ヒエロニムス・ボスの傑作、三連祭壇画『快楽の園』には地上の楽園と地獄が描かれます。開氏の奇怪な巨人や生物が描かれる大作トッカータ_sに、ボスのツリーマンと怪物達が跋扈する地獄を連想する方もいらっしゃるのではないでしょうか。とすれば、小品に描かれるたおやかな少女や少年を、ボスの楽園に憩う男女に喩えることも可能かと思います。彼等は変わりゆく自分に恥じらい戸惑いを見せるのですが、そうした姿が擬古典的に抒情性を持って描かれるのです。
 多重露出やスローシャッターで写し出されたかのように、顔はいくつかの表情で構成されています。薄皮に描かれた喜怒哀楽が重なり、上皮が避けて下の表情がうかがえるのです。このあたり、鴨居玲の最晩年の作品、自分のマスクを取り外してのっぺらぼうになった『肖像』のような自虐性はありません。変容していく自分を愉しんでいるようです。
端正な描写と絵肌が完成された世界を築き上げ、開作品の世界を広げています。  (二木伸一郎)

作品詳細:開光市《トッカータ》2015、41.0×31.8cm

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