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学芸員コラムColumn

2016年9月23日展覧会#12 名作とは。

展示風景

展示風景

 洋画(油絵)で誰もが思い浮かべる名作といえば、青木繁の《海の幸》や黒田清輝の《湖畔》、チョット通な方であれば藤島武二の《黒扇》、岡田三郎助の《あやめの衣》などをあげられるのではないでしょうか。岡田の作品が昭和2年、あとはいずれも明治後半の作品です。 これらはもう50年も前、私がまだ小学生の頃から名作の誉れ高く、洋画中の至宝として君臨してきました。 そこから50年遡れば大正のはじめ、青木が《海の幸》を描いた明治37年から10年とは経っていません。洋画の歴史はせいぜいが150年、まだまだ浅いのです。にもかかわらず、名品名作は固定されてしまっている。そういう気がしてなりません。  
 私的には洋画のピークは昭和40年代半ば以降の30年間、と考えています。明治末から昭和の始めに生まれた画家たちが、昭和30年代の抽象ブームを経て、自分の資質を再確認した時期です。ところがこの頃から、〝もの〟を熟視してキャンバスに筆を奮う絵が評論の対象とされなくなっていきました。代わりに観念的、あるいは思考的作品、つまりコンセプチュアルな作品が持ち上げられるようになったのです。 最近では、逆に写真のように微細に女性や静物を描く作品がもてはやされています。どうも根っこは同じですね。見て解釈することを嫌う。描くほうも鑑賞する側もやや安易なのではないでしょうか。なんのかのと言っても、絵をみることは自問自答のいくぶんかの苦しさをともなうことだと思うのですが。 今回の展覧会で洋画部門の作品の主体を、昭和期後半以降においたのは、新たな名作の提示ができればという思いがあったからなのですが、どうでしたでしょうか。 (普及課長 二木伸一郎)

 

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